織物傘の組み立て vol.8 特別篇~手付け~

槙田商店は、織物の製造から傘の組み立てまでを一貫して行う、世界で唯一の織物工場です。傘作りの話をするとき「作り方を初めて知った」「手作りとは思わなかった」とのお声を多く耳にします。

傘は、織り上がった織物に、防水・撥水を始めとした加工を施します。そうして出来上がった生地は、裁断・透き見(すきみ)・中縫い・紐付け・中綴じ・仕上げの工程を経て傘になります。第1回~第6回で、各工程をご紹介しています。

傘製造工程
6回「vol.6 仕上げ」の中で触れた、傘作り最後の工程「手付け(てつけ)」。第8回の今回は、その手付けの様子により注目してお届けいたします!


~手元の付け方~
傘の持ち手のことを「手元(てもと)」といいます。(ほかにも傘の柄()、ハンドルなど、呼び方は色々ありますが、槙田商店では主に手元と呼びます)。この手元を付ける工程のことを、「手付け(てつけ)」といいます。ここでは、実際の流れに沿って、付け方をご紹介いたします。

まず、用意するのは、手付けに必要な接着剤。この工程では、2種類の液を混ぜ合わせて作るタイプの接着剤を使用しています。長年の作業と経験の中で、手付けに適した独自の比率で配合しています。
傘製造工程
傘の支柱となる中棒(なかぼう)に、接着剤をつけていきます。このとき用いられる道具は、先代の職人の手作り。不要になった傘骨を再利用し、片方の端を潰して、平たくしたものを使用しています。
傘製造工程
こうして接着剤を塗った後、紐を巻き付けていきます。紐を巻き付けることによって、手元が抜けにくくなり、固定する力が強くなります。

手元には、もみじ・カエデ・ブナといった木製、寒竹(かんちく)、合皮など、いくつかの種類があります。素材の違いはもちろん、大きさの違いや形状の違いなどもあるので、実にさまざまなタイプが存在します。
太さの違う糸
紐の太さは3段階あり、どの手元であっても「中棒に紐を巻き付ける」という工程は変わりませんが、紐の太さ、巻き方や巻く量は、手元ごとに変化します。こういった紐と手元の相性は、これまでの経験と、今も続く傘1本ごとの丁寧な確認作業によって確立されてきました。
傘製造工程
巻き付け終えたら、紐をカットします。カットする道具もお手製です。両手が使えるので自由度が高まり、ちょうどいい長さに調整することができます。カットしたあとはもう一度、接着剤を塗布して、紐を安定させます。
傘製造工程
最後に、中棒に柄を差し込みます。もちろん、ただ付ければ良いというわけではありません。持ちやすさ、使いやすさも考えられており、はじき側に手元の背が来るようにしたり、紳士傘の場合には玉留めの位置調整にも注意を払います。最後にしっかりと乾燥させれば、傘の出来上がりです。

*はじき…傘を開く際に押すパーツ
*玉留め…雨露が傘骨に沿って流れ落ちていく先端部分(露先/つゆさき)をまとめるための金属パーツ。主に紳士傘の手元に付属。
傘製造工程
手元の中には、手付けの際に割れてしまうものもあり、細心の注意を払っています。こういった繊細な手元の場合には、より慎重さが求められるので、時間や気持ちのゆとりが大切だと話してくれました。しかし、やはり職人技。1本あたり3040秒ほどと、素早い手つきで作業をこなしていきます。接着剤が固まり始める前に、手元を付ける必要があるので、素早く正確な仕事と集中力が求められます。


~傘の修理について~
槙田商店では、弊社の製品傘を対象に、修理も承っております。傘の骨が折れてしまった、傘生地が破れてしまったなど、もしもの際はお気軽にご連絡くださいね!詳しくは「ご購入後の傘の修理について」をご覧ください。
傘一覧
槙田商店の傘は、自社の職人の手によって1本ずつ丁寧に作られています。織物に対しては、もちろんのこと、傘骨や手元にもこだわっています。特に傘の手元は、種類も多く、取り付けるものによって傘全体のイメージが一変します。みなさんが服装に合わせて靴を選ぶように、私たちはその傘に合った手元を選び抜きます。手元は、傘全体の印象の要であり、ときにはオリジナルの柄を作ることもあります。

「長く大切にしたくなる傘」「長く愛され続ける傘」をお届けできるよう、日々、傘作りに取り組んでおります。


手元(傘の柄)をはじめとした、詳しい傘のパーツの名称や説明は「傘の柄など傘の部位の名称を解説」でご紹介しています。

織物傘の組み立てコラム一覧」はこちらからご覧いただけます。

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