織物傘の組み立て vol.5 中綴じ

槇田商店は織物の製造から傘の組み立てまでを一貫して行う世界で唯一の織物工場です。傘を手掛け始めた昭和30年頃から、今日まで作り続けてきました。傘作りの話をするとき「作り方を初めて知った」「手作りとは思わなかった」とのお声を多く耳にします。

そこで、織物から傘が出来上がるまでを工程ごとにご紹介していきます!

傘は、織り上がった織物に、防水・撥水加工を始めとした加工などを施します。そうして出来上がった生地は、裁断・透き見(すきみ)・中縫い・紐付け・中綴じ・仕上げの工程を経て傘になります。いよいよ、パーツまで付いた1枚の円状の生地と、傘骨を縫い合わせていきます。第5回となる今回は「中綴じ」についてご紹介致します。

傘を差したとき、傘骨1本につき、数か所ずつ綴じてあるのがわかると思います。

この綴じる工程を「中綴じ」と呼び、1か所ずつ手縫いしていきます。一見シンプルに見えますが、作業の中にはいくつもの工夫があります。

中綴じは、1か所につき、糸を2周させて縫っていきます。このとき糸を通す場所は、小間(コマ。三角形の生地)を繋ぎ合わせる中縫いによってできた縫い代です。その幅は、わずか2mmほど。中綴じに使う糸が表面に出ないようにするため、縫い代に糸を通します。

綴じるときも、糸をただ2周させているわけではありません。縫い代に糸を通したあと、写真のように輪を作り、その中を通します。2周ともこのように縫っていきます。縫い付けるときも、しっかりとその場所で固定されるように指で押さえます。

ただ2周させただけだと、以下の写真のように糸が同じ位置に留まらず、緩さの原因になってしまいます。

輪を作り、そこに糸を通すことで、同じ位置に縫うことができます。その結果、骨を固定する力も強まります。1か所にかかる時間はわずか十数秒ほど。これまでの経験が、このスピードに繋がっています。

玉止めをする際にも効率を考えた工夫がなされています。玉止めをしたあと、数ミリ離れたところに玉結びをします。糸を切る前に玉結びまですることで、糸を切ってから次の綴じ作業へ、スムーズに入ることができます。中綴じに使う糸は、蠟引きをされており、玉結びの玉部分からギリギリの位置で切ると、玉が抜けてしまいます。もちろん、長く切ればその分、見た目が美しくありません。玉が抜けずに、見た目の美しさも損なわないよう、玉止めから糸を切るまでにも、繊細な調整が行われています。

中綴じの際にも、汚れや傷がないかを確認します。それに加え、タグの有無や、付属パーツの位置などもチェックしていきます。これまでも、透き見をはじめとした確認作業は行われていますが、傘になってようやく見える傷があります。そこで見つかった傷がある小間は、交換して新しいものに変えていきます。汚れがある場合には、汚れ落とし液を使ってきれいにします。生地によっては、シミや白くなってしまうため、素早く拭きとっていきます。

作業のひとつひとつに、美しい仕上がりや効率化のため、さまざまな工夫がなされています。普段傘を使っていても、なかなか注目することのない部分ですが、手作業だからこその細かな調整や技術が、しっかりと込められています。


いかがだったでしょうか。傘ができるまでには、実に多くの工程と人の手が必要です。

私達が丹精込めて1本ずつ作り上げた傘がどのように生み出されているかを丁寧にお伝えすることで、みなさんが手にしてくださった傘を特別な気持ちで大切にお使いいただければ嬉しいです。第5回は「中綴じ」についてご紹介しました。次回は「仕上げ」についてご紹介していきます。ぜひお楽しみに!

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