織物傘の組み立て vol.6 仕上げ

槇田商店は織物の製造から傘の組み立てまでを一貫して行う世界で唯一の織物工場です。傘を手掛け始めた昭和30年頃から、今日まで作り続けてきました。傘作りの話をするとき「作り方を初めて知った」「手作りとは思わなかった」とのお声を多く耳にします。


そこで、織物から傘が出来上がるまでを工程ごとにご紹介していきます!

傘は、織り上がった織物に、防水・撥水加工を始めとした加工などを施します。そうして出来上がった生地は、裁断・透き見(すきみ)・中縫い・紐付け・中綴じ・仕上げの工程を経て傘になります。生地と傘骨を縫い合わせられると、いよいよ最終段階へ入ります。第6回となる今回は「仕上げ」についてご紹介致します。

中綴じによって、生地と傘骨が縫い合わせられたら、まずアイロンをかけて生地のシワを伸ばしていきます。生地によって厚みなども違うので、それぞれに適した温度調整をし、傘の内側の面にアイロンをかけていきます。このときも、傷や汚れの確認を怠りません。

アイロンをかけ終えた傘は、たたみの作業へと移ります。この「たたみ」で作られるシワは、1番初めのシワ、つまり、今後この傘をたたむ際の「基準線」の役割を持ちます。そのため、できるだけ綺麗になるよう、慎重にたたんでいきます。長年の経験が生む美しさを実感します。

こうして美しくたたまれた傘のうち、種類にもよりますが、長傘には「陣笠打ち」をしていきます。この傘の場合、先端の金属部分を「石突き(いしづき)」、木製部分を「突先(とっさき)」といい、この突先と生地の境目にある金属のパーツを「陣笠(じんがさ)」と呼びます。写真の左側が陣笠を付けた傘、右側が付ける前の傘です。これを取り付けることで、雨水が入ってしまうことを防ぐのです。ちなみに、陣笠の下にある、ひらひらとした生地のパーツは「菊座(きくざ)」と呼びます。名前の通り、菊の花をかたどったかわいらしいパーツです。

陣笠打ちの工程順としては、まず菊座を入れ、次に雨水の侵入をより防ぐための防水キャップを入れます。それらの上から陣笠を被せます。上の写真をご覧ください。一見、ぴったりとハマっているように見えますが、中棒と陣笠の間にはわずかな隙間があるのです。

この隙間を埋めるために用いられるのが筒状の道具「陣笠殺し」です。中棒に被せ、上から木槌で叩いていきます。すると、陣笠の先端側の部分が丸みを帯び、隙間を埋めることができます。なにやら物騒な名前ですが、傘屋ならではの大切な道具のひとつです。

この「陣笠殺し」も、穴の大きさによって何本か使い分けがされています。穴の大きさの差は、ほんの数ミリ。中棒が木製の場合、木を削って作るので、それぞれの太さがわずかに違います。どの傘にも対応できるよう、その都度使い分けられています。

こうして隙間を埋めた陣笠に、釘を打ち込んで固定します。まず穴を開け、そこに釘を打ちます。この穴も、ただ開ければいいというわけではありません。小さければ釘が入りませんし、大きければ釘が抜けたり、曲がってしまうことがあるからです。穴開けや釘を打つときは、中棒の素材によって硬さが異なるので、力加減が難しく、慎重に作業をしています。

最後に手元を付ければ完成です。この工程を「手付け(てつけ)」と呼びます。持ちやすさ、使いやすさを考え、ジャンプ傘のボタンや、手開き傘のはじき(傘を開く際に押す部分のこと)側に手元の背がくるようにします。骨にボンドをつけ、糸を巻いてから手元を取り付けます。差し込む穴の大きさによって、糸を2重にするなど、抜けないように工夫を施しています。

主に紳士傘の場合には、玉留め(手元ある上下に動く金属パーツのこと)の位置にも注意を払います。傘を閉じた状態で1㎜程の隙間が開くように位置を調整します。ずれてしまうと、傘が開かなかったり、玉留めの意味がなくなってしまうからです。

傘によって使用している素材や特性が異なり、それぞれに適した道具の使い分けや力加減の配慮、ミリ単位での位置調整が行われています。細部にまで神経を注ぎ、手を抜かずに作り上げるからこそ、仕上がりの美しい傘になるのです。


いかがだったでしょうか。傘ができるまでには、実に多くの工程と人の手が必要です。
私達が丹精込めて1本ずつ作り上げた傘がどのように生み出されているかを丁寧にお伝えすることで、みなさんが手にしてくださった傘を特別な気持ちで大切にお使いいただければ嬉しいです。第6回は「仕上げ」についてご紹介しました。次回は、特別編として、お伝えしきれなかった「キズコマと付属」についてご紹介していきます。ぜひお楽しみに!

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